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更新日:2010-12-14
結晶成長
文責学部4年姜 正敏

 4年生は現在、石英基板の表面にAgを真空にて蒸着させ、AFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)を用いてその構造を観察する実験を行っています。これからAuも同様に真空蒸着させ、Agとの比較も行う予定です。

 薄膜サンプルの製作手順は以下の通りです。まずタングステン線で作った加熱台(バスケット)にAgを巻きます。その後Agを真空の中で蒸発させます。すると飛び出したAg原子が石英ガラス基板に吸着されます。この一連の過程を蒸着と言います。基板の表面に蒸着したAg原子は、Ag原子同士結合しあってクラスターを成します。そのクラスターがどんどん成長していくことによって薄膜が形成されると考えています。膜の厚さと蒸着速度、基板の温度を変えて、それがクラスターにどのように影響するのかをAFMで観察します。それによって、薄膜の形成過程を理解したいと思っています。

 また、より良い真空度の環境でより短時間に多くの薄膜サンプルを作るために新しい蒸着装置を立ち上げています。実際に高い真空度を得ると同時に、真空技術と装置の組み立てに関して理解することを目的としています。

 図は膜厚25ÅのAg薄膜の表面を表しています。画面上に丸く粒のように見えているものがクラスターです。このクラスターがどのように生成され、成長するかを理解すること、また特定した状態においてのクラスターの特徴を捉えること、そしてそれを膜厚における物性(光吸収など)の理解につなげることが、我々の実験の目標です。


Ag25Å のAFM像(1µm×1µm)

Ag25Å のAFM像(500nm×500nm)
薄膜の光学的性質
文責学部4年鈴木 貴幸

 私たちは作製した薄膜の透過光スペクトルをとり、光学的な応答を調べています。光学的な性質はその構造や電子状態によって決まってくるため、光のスペクトルからクラスターの構造や電子の動きを推定することが可能です。

 たとえば、バルクの金属には金色や銀色など固有の色があります。これは固体の周期構造や電子状態に依存しています。しかし、薄膜では固体を形成する途中であるために、クラスターの形成される場所やサイズにばらつきが生じます。また、物質表面の凹凸の効果が顕著に現れるようにもなります。その結果、光学的な反射や透過の特性が大きく変化し、その違いは色という目に見える形で現れるのです。下の写真をご覧ください。膜厚25ÅのAg薄膜は銀色にはならず、青色の光を反射し、赤い光は透過してしまうことがわかります。

 このような目に見える現象をスペクトルとして定量化し、光学応答の波長依存性から実際の物質構造や電子の応答を考察することが私たちの取り組んでいる課題です。サンプルを変えれば物質に固有の性質を調べることができ、同じサンプルで膜厚を変えればその物質の形成・成長過程を考察することができる、ということになります(偉そうに書き連ねましたが、いまはスペクトルを構造に対応させる勉強をしている最中で、先は長いです)。


Ag薄膜(膜厚25Å)

Ag薄膜(膜厚25Å)の透過光スペクトル
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