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更新日:2010-12-18
修士STM班の実験
文責修士課程1年生田目 謙
修士課程2年堀井 広幸
私たちは、走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunnelling Microscopy,以下STM)を用いて実験を行っています。 STMでは、金属の針を観察したい試料表面のぎりぎりまで近づけ、量子力学的な現象である、トンネル効果によって流れるトンネル電流を検出します。トンネル電流の大きさは、針と試料の距離に大きく依存します。そこで、トンネル電流を一定に保つように、針で試料表面をなぞることによって、表面の凹凸を原子レベルで画像化することができます。図1は、針で試料表面をなぞる様子を表した模式図です。
図1. 針で表面をなぞる様子 図2. Si(111)7x7表面のSTM画像

STMでシリコンの表面を観察すると、図2のような画像が得られます。この画像の丸い粒は、シリコン表面の原子です。このように、STMは分解能が非常に高いため、試料表面の原子一個一個がどのように配列しているかを見ることができます。

私たちの研究では、真空蒸着法でシリコン基板上に銀原子を蒸着していき、それをSTM観察します。それによって原子レベルで結晶ができる過程を理解することを、目標としています。シリコン表面では、三角形のポテンシャルの檻が形成されます。銀原子がシリコン表面に吸着すると、基板の熱によってその三角形の檻の中を動き回ります。結果として、STM画像では図3のように、銀原子が吸着した檻が三角形に光ります。

しかし、室温では基板の熱による銀原子の拡散があるため、銀原子が三角形の檻の中のどこにいるのかわかりません。温度可変型STM(Variable Temperture STM,VT STM)では、液体ヘリウムを用いて試料の温度を数Kまで冷却することができます。それによって、図4のような銀原子の表面拡散が止まった状態を観察できます。今後は、蒸着する銀原子の量をより増やしたり、電子状態を測定、解析したいと考えています。

図3. 単一銀原子が吸着した
Si(111)7×7表面の室温STM画像
図4. 単一銀原子の
Si(111)7x7表面の低温STM
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