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更新日:2015-12-22 |
4年生の実験 | |||
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このページでは、私たち学部4年生が研究室で行ってきた実験について簡単に紹介したいと思います。実験の概要としては、Ag(銀)薄膜の作製、AFMと分光光度計を用いた測定です。装置などの説明は順を追って説明していきます。 今までの物理学実験とは違いテキストなどはなく、研究計画や目標を自分たちで考えて行っていきます。もちろん、最初は装置の使い方などわからないこともあるので、適宜、研究室の方々が教えてくれるので安心してください。この実験を通して、実際に自分でやってみて、その結果から次はどうするか、といったような実験に必要な考え方や技術が身に付きます。 では、4年実験の内容を紹介していきます。
●Ag薄膜の作製 図.1 真空蒸着装置(右: 蒸着中) では、次にどうやって薄膜を作製するか説明します。作製には「真空蒸着装置(図.1)」を用います。簡単に機構を説明すると、銀線を加熱して蒸発させて、真上にセットした石英基板に銀原子を付着させる、といったものです(図.1 右)。図で、オレンジ色に光っているのはバスケットとよばれるものでここに銀線がまかれています(図では見えにくいですが、少し色が暗くなっているところです)。これを真空中で行うのですが、その理由として、装置内部の銀原子の邪魔をする余分な気体分子を減らして、まっすぐ効率的に基板へ飛ばすことができ、また不純物の少ないきれいな試料表面を作製できるといったことが挙げられます。 このようにして、私たちは厚さの異なるAg薄膜を何種類か作製しました。 前述したように薄膜ではバルクとは異なった物理的性質があります。それは、まず目で見ても確認することができます。銀は何色でしょうか。そう、銀色ですね。ピカピカしたグレーのような色を思い浮かべるでしょう。しかし、銀薄膜はどうでしょうか。下の作製した薄膜の写真をみてください。 左へ行くほど薄膜の厚さは薄くなっています。一番左は赤褐色、真ん中は紫っぽく、そして一番右は藍色にみえると思います。 図.2 Ag薄膜(厚さ:左から、20Å, 91Å, 200Å) この作製したAg薄膜について、次のような実験を行いました。 |
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私たちは作製した銀薄膜に対して、AFM(Atomic Force Microscope)と分光光度計という装置を用いて実験を行いました。
○AFM(Atomic Force Microscope)
・ 予想していただけましたか。それでは図3をご覧ください。これは膜厚200Åの銀薄膜(図2の右側の試料)のAFM像です。図の明るい部分が凸、暗い部分が凹です。意外な構造でしたか?それとも予想通り? 図3:銀薄膜(膜厚200Å)表面のAFM像(1μm×1μm) この試料では銀のクラスタが表面に形成されており、それぞれのクラスタが部分的につながっている様子がご覧いただけると思います。さらに、異なる膜厚の銀薄膜表面では異なる構造が観測されます。 ミクロスケールをかなりの精度で測定できるAFMですが、その基本的な動作原理は物理を齧った人であれば簡単に理解できると思います。AFM(Atomic Force Microscope)のAtomic Forceとは原子間力のことです。AFMは試料表面との原子間力を利用して表面構造を測定しているのです。図4はAFMの動作原理の模式図です。図で赤く表示されている探針(カンチレバーといいます)が試料表面をなぞりながら動きます。このときカンチレバーは試料表面との原子間力によって僅かにたわみます。AFMはこのたわみを一定になるようにしながら試料表面をスキャンしていきます。そして、カンチレバーの位置と高さの情報がコンピュータで処理されて先ほどの図3のようなAFM像が得られます。 図4:AFMの原理図
○分光光度計 図5:銀薄膜(膜厚200Å)の透過率 図5は膜厚200Å銀薄膜の透過率です。横軸が入射光の波長[nm]、縦軸が透過率[%]です。また図の上部には参考のために可視光のスペクトルを示しました。この試料では波長320nm付近の光が良く透過されていることが分かります。また、試料に白色光を透かして肉眼で見ると紫色のように見えると予想できます。このように、光スペクトルを用いることで試料の光学応答が一目でわかるようになります。 以上のような装置を用いて薄膜や表面構造についての実験を自分たちで計画を立てながら行いました。少しでも関心を持っていただければ幸いです。 |