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STM-HREELSによる金属クラスターの成長と電子励起状態の研究 | ||||
文責 表面物理学研究室博士3年 加藤大樹 | ||||
金属クラスターの電子励起状態について金属結晶表面に電子線が入射されたら結晶と真空の境界面ではどんな現象が起きるのでしょうか?外場がかかるため誘起電荷が発生する。このように答えられるでしょう。しかし、それでは、その誘起電荷自体はどこにどのように分布するのでしょうか?また、振動する外場に対してどのように応答するのでしょうか?結晶自体を微小にした場合(クラスター)どのようになるでしょうか?この点について、興味を持って研究を行っています。具体的には水素終端Si表面上のAgクラスターについて、その電子励起状態を測定しています。 Siの表面をHで化学結合することで、基板との相互作用が弱まり、Agが液滴状に成長します。結果として原子数層分の厚さを持ったディスク上のAgクラスターが形成されます。このことを用いて、微小なクラスターとその電子励起状態(一電子の励起や電子の集団励起を含めた励起状態)を調べています。クラスターの素励起、表面プラズモンから応答の様子を明らかにすることを目指しています。 STMによるクラスターの直接観察とHREELSによる電子励起状態の測定を複合させて、この問題にアプローチしています。 水素終端Si上Agクラスターの HREELS測定模式図 HREELSの原理についてSTMは他に説明をゆずるとして、HREELSの説明をしましょう。 STMは性能の高低に拘らなければ、現在表面科学分野で広く研究に利用され、その能力を発揮しています。それに対してHREELSは、保有している研究機関が少なく、特徴的な装置となっています。HREELSはHigh Resolution Electron-Energy-Loss-Spectroscopyの略称で、日本語に直すと高分解能電子エネルギー損失分光となります。一般にEELSと呼ばれる装置群に属しますが、表面の物性を測定するためにかなり特化した装置となっているため、全くの別物と考えてよいでしょう 原理はまさにその名の通り、低速電子線を結晶表面で反射させ、損失したエネルギー量を測定する装置です。この様に文章で書くと単純ですが、分光器の持つ精密な構造と電子線の細かな制御により、精度の良い測定を実現させています。電子線を用いた分光法としては異例のmeVオーダーの分解能を誇ります。測定対象は広く、表面フォノン(表面での原子集団振動)、表面プラズモン(表面の誘起電荷集団振動、表面分子振動(結合の伸縮や折れ曲がり振動)などが測定にかかります。
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